「社会保険の削減」を理由に企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入するのはオススメしない

社会保険料は、社員にとっては「お給料から天引きされているもの」という感覚ですが、中小企業の経営者にとっては「労使折半」が最初に思いつくワードだと思います。悩まされるコストの1つだからですね。

1997年から2020年を例に社会保険料をみてみると

  • 厚生年金は、12.2%から18.3%
  • 健康保険は、5.8%から約10%

国の一存で、保険料が引き上げられました。労使折半なので、企業負担も増えていきます。

そんな中、顧問先の税理士や社会保険労務士の先生から「企業型確定拠出年金を導入すると社会保険料の削減につながりますよ」と提案されることがあります。

社会保険料の削減を狙って導入する中小企業も少なくはないです。

ここだけ聞くとすぐにでも導入した方がいいような気がしますが、社会保険料の削減を理由に企業型確定拠出年金を導入するのはオススメしません。

この記事では、社会保険料の削減のために企業型確定拠出年金の導入をオススメしない理由について。参考になれば幸いです。

社会保険料が削減につながる背景

企業型確定拠出年金を導入すると社会保険料の削減につながる可能性があります。

あくまで可能性です。100%削減できるわけではありません。

令和3年3月分(4月納入分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表をもとに作成

図は、お給料30万円の会社員の方が、毎月15,000円を企業型確定拠出年金に拠出した場合の社会保険料の例です。

導入前は、お給料30万円の等級をもとに社会保険料が決まっていました。

30万円の場合、社会保険料は43,254円になります。

導入後、毎月15,000円を拠出すると15,000円は、お給料ではなくライフプラン給付という位置づけになるので、差額の28.5万円の等級をもとに社会保険料が決まります。

28.5万円の場合、社会保険料は40,377円になります。

月給30万円の社員が、毎月1万5,000円を拠出した場合の社会保険料と税金

  • 社会保険料 43,254円→40,377円 ▲2,868円
  • 所得税 6,125円→5,733円 ▲392円
  • 住民税 12,425円→11,658円 ▲767円

企業の負担額は、年間で▲34,416円の社会保険料の削減になります。大きいですね!

これは、社員が企業型確定拠出年金を拠出したことで、社会保険料の等級が下がったからです。逆を言えば、等級が下がらなければ社会保険料は下がりません。

DCプランナー
祖父江仁美

仮に社会保険料が削減できても、導入コストがかかります。実質の負担額が、増えてしまうケースもあるので注意ください。

社員が「試しに毎月3,000円だけやってみようかな」とはじめたところで、等級は変わらないので、社会保険料は下がりません。

等級が変わらない社員が、1人でも100人でも社会保険料は下がりません。社会保険料を下げるには、社員に企業型確定拠出年金をやるメリットを理解してもらい、掛け金を増やすことが必要です。

導入費用が別途かかる

さすけん

企業型確定拠出年金に拠出する社員が多ければ、その分導入費用はかかります。

企業型確定拠出年金は、コスト削減のツールではなく企業の福利厚生になります。

導入後は、導入時にかかる費用と月額費用があります。他の退職金制度と比べたら少ないコストで導入できるとはいえ、仮に社会保険料の削減ができたとしても、初期費用を合わせたらそこまで変わらない企業も出てきます。

上手くいけば「社会保険料の削減によって、導入費用を穴埋めできた!」くらいに考えるのがちょうどいいかもしれません。

社会保険料が下がることで、公的保険の給付が下がるというデメリットも

社会保険料の負担に目がいきがちですが、給付にも目を向けてみてください。

社会保険料の削減は、社員の厚生年金、健康保険、介護保険、雇用保険などの給付が下がることにつながります。

導入しても社員が拠出しない企業は、社員のデメリットを考えていないことが多いです。

運用で成果を出したり、民間の生命保険を見直したりして公的保険をカバーできればいいですが、社員には説明会や投資教育の場を設け、制度を有効に活用してもらえるように説明を重ねていくことが必要です。

社会保険料の削減を理由に導入するのはオススメしない理由 まとめ

企業型DC専門 ホームページ開設

企業型確定拠出年金の導入の際、働く社員のことを考えてくれる経営者や人事担当者がいることは、働く社員にとってとても幸せなことです。

だから社会保険料を下げることを目的としての導入は、オススメしません。

企業の福利厚生として活用できれば、結果として社会保険料の削減につながるので、企業と社員の豊かな未来のために活用してください。

社会保険料の削減のために企業型確定拠出年金の導入をオススメしない理由について書きました。最後までお読みいただきありがとうございました。

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